アユミギャラリーの前を通りかかったら、不思議な人形のポスターが目に留まり、思わず足を踏み入れてみました。
造形作家の田口輝彦氏の作品展。
このポスターも、中に入った感じもそうなのですが、遠目から一見すると「ピノキオみたいなカワイイおもちゃの世界かな!?」と思えるようなほのぼのとした雰囲気もあるのですが、じっくりみると全然そういうものには見えないパワーを持つ作品の数々に圧倒されました。
田口さんのホームページにも書いてありますが、「作品はご覧になる方が好き勝手に受け取って下さるのがいいのです」というお考えがとても私には心地が良かった。展示されていた田口さんの作品には、「天使A」などのシンプルな題名しかかいていないところにもそういうのが現れているのでしょう。題名にいろいろ込められていたりすると、それを通してしか作品からのメッセージが入ってこないと感じる時があるので、「ああ、この方は、私のいい感じを分かってくれているなー」なんて勝手に思う始末。そして、作品からはなんというか、エネルギーというのでしょうか、そんなかんじのものをビンビン自由に感じることができました。
不思議な人形達は、からくり(?)が仕掛けられてあったりして、動かすことが出来たりします。オブジェクトが動的であるところも、また強く何かを感じる理由の一つになっているのかもしれません。自動的に動くのではなく、見た人が「自分で」動かしてみられるところにまた意味があるなぁ、なんて感じます。
この左の人形は、上の人形と同じなのですが、上の人形から、手や翼を隠したり、顔を奥にしまって全然ちがう顔の扉を顔の前にかぶせることができるようになっています。天使は、自由に使えていた手も隠して、全く違う人の仮面をかぶってしまい、なんだかつらそうです。
これは狭い箱の中に人形が入っていて、それを3つの扉で開け閉めするようになっているもの。扉がジグゾーパズルのような形なのも気になりますが、実際、例え一つの扉でも閉じてみると、ものすごい私は恐ろしいような感じを感じてしまいました。
なんかできればそうは考えたくないのですが、アウシュビッツの立ち牢(人が立つのがやっとの牢屋に入れて扉を閉め、動けない状態で放置して殺す牢屋)が頭をかすめてしまい、おもわずくらくらしてしまったほど。
また、この人形が半笑い?しているところも釘付けになってしまう理由の一つで、何とも言えないんですね。
この子は本当の心をいつでも隠せるように、胸に扉をもっているのかもしれません。顔も、まっすぐしか見えず、四角い型にはめられた姿は、なんかいろいろ感じるものがあります。この四角い型は、この子にとってなんなんだろうなぁ、なんて思い出すと、本当に、人形一体一体の前から離れられなくなり、じーっとみたり、なにかいろいろ動かしてみてはまた、うーんとうなってみたりで、なかなか深い時が過ごせます。
この人形達の産みの親である田口さんともちらりとお話しさせていただいたりしたのだが、ゆったりとした時間の中で穏やかに暮らしている感じの、一緒にいてこちらまで気持ちがふんわりするような雰囲気をお持ちのダンディーなお方なのですが、この方からどうやってこういう作品がうまれてくるのだろうと、なにか作品ににたような素敵な不思議さをいい意味で感じました。
すっかり作品の虜になってしまい、出るのに後ろ髪を引かれましたが、とても良い空気の中で充実した時間を過ごすことが出来ました。
これは、一見みんな同じように見えるんだけど、各自あちこちについている引き出しをあけると、全く違ったものが入っている、というもの。ベトナムのお金が入っているのもあれば、卵が入っているものもあり、そこを開けてみないかぎり大まかに似て見える人形一つ一つに、個性が感じられて面白い。
この田口輝彦氏の作品展は、次の水曜日(2006年5月17日)までですので、ご覧になりたい方はお早めに、お見逃しなく!
アユミギャラリーの地図は
こちらです。
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